先を行く人ほど視野が狭くなっている
「死にたまふ母」で有名な歌人 斎藤茂吉。
その斎藤茂吉の息子さんは、なんと精神科医で有名な方なのだそう。
斎藤茂太(さいとう しげた)さん(1916年3月21日 – 2006年11月20日)がその人。
「モタさん」の愛称で、親しまれた名医で、作家としても活躍されていたそう。メンタルヘルスに関しても、非常に有益な文章が多いので、読んだ書籍よりご紹介します。
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先を行く人ほど視野が狭くなっている
今回は、書籍「心の掃除」の上手い人下手な人」より、一節を考えてみます。
先を行く人ほど視野が狭くなっている、今回は、これについて。
車の運転免許をとった人はご存知だと思うが、人は早いスピードで走っていると、だんだん視野が狭くなってくる。
止まっていれば、顔も目も隠さずに百度以上の角度で見えていた前方が、スピードを上げるにしたがって、六十度、四十度……と、見える範囲が狭まってくるのだ。引用:「心の掃除」の上手い人下手な人 P.91 より
人は早く進むほど、自然と視野が狭くなってしまいます。
上の写真は、猛スピードで走る自転車に乗っている様子です。
中心あたりはある程度は視認できますが、周囲の林はブレてしまいほとんど視認できません。
早く走ると視野が狭くなる法則は、実は物理的なスピードだけではない。仕事や日常でも同じことがいえる。
引用:「心の掃除」の上手い人下手な人 P.91 より
早く進もうとした際に、視野が狭くなることについて、書籍では「仕事や日常でも同じこと」といっています。
例として、恋愛で一目惚れしたときは、相手の良いところばかりが見えていて、いざ付き合って熱が冷めたら「なんでこんな人を好きになったのだろう?」と、すぐ別れてしまう話が書かれていました。こんな話、よく聞きますよね。
また、バブル時代、銀行はお金を貸すことばかりに夢中になり、いざバブルがはじけると巨額の不良債権(返されなかったお金)が出てきて、国民の税金で立て直す自体になってしまいました。これも日本経済が急成長していたので、世界経済全体、また、日本の成長が止まる可能性に気づかなかった視野の狭さといえます。
「イケイケ」の時ほど、何か見落としているもの
人間、自分が頑張った通りに調子が良くなったとき、つまり努力と見込んだ成果が一致しているときほど、フルスロットルでアクセルを踏みたくなるものです。
- 思い切って提案した自分の企画が社長から絶賛された。
- 子供を塾に行かせたら成績がクラストップになった。
- 宝くじの買う場所を変えたら2連続で大当たりだった。
- 絵描きに憧れて、絵画作品を作ったら有名な賞を受賞した。
- ずっと片思いだった人が、最近、自分のことを「好きだった」らしいと聞いた。
…etc
自分が「こうなったらいいな」と思って努力したことが実現するのは嬉しいですし、出来るならば、このまま調子よく物ごとが進んで欲しいと思います。そうしたときに、多くの人が「良い未来」だけに視野を狭めて願いを叶えようと一気にアクションを起こしがちです。
しかし、そういう時ほど、何かを見落としているかもしれないことを、冷静に気にかけたほうが良いのです。
- 社長から絶賛されたが、実施にはライバルの同僚の協力体制が必要だった。
- 子供は親に言われたから塾に行っているが、本当はサッカーがしたいと我慢していた。
- 宝くじは、そんな連続して当たるものじゃなかった。
- 有名な賞を受賞したとしても、絵描きで生きていけるかどうかは別だった。
- 「好き”だった”」は、ずっと過去の話で、相手はすでに結婚していた。
当然ですが、未来にはいろいろな可能性があります。
万が一、「自分が思ってもみなかった現実」が立ちはだかったとき、視野を狭めアクセルを踏み込み過ぎてしまった人は、なかなか方向転換できなくなってしまうものなのです。
視野を広げるためには、ときどき立ち止まったり、顔の向きや身体の向きまで変えてみたりしたほうがいい。
引用:「心の掃除」の上手い人下手な人 P.91 より
「うまくいきっこない」と、なんにでもケチをつけて、喜びを半減させて生きるのはナンセンスです。でも、もしあなたにとって人生を左右するほど重要なことであれば、喜ぶと同時に、視野を広げる工夫をすることも大事です。致命的な選択ミスは、自分が調子が良いときに生まれやすいものだからです。
レベルの高いことを成し遂げようとするときに
イケイケムードのときに、いかに冷静さを保持できるか。これはプロアスリートの世界などでも重要とされるメンタル要素ですよね。「流れが来たときに冷静さを失って、ガムシャラになるだけ」では、いざという時に脆いものです。
ちょっとしたことでも冷静さを保って視野を広げる。そんなクセをつけていれば、自ら流れを損なうようなミスは起こしにくくなります。
もちろんプロアスリートに限らず、私たちの生活でも自分にとってレベルが高いことを成し遂げるときに備えて、常日頃、視野を広げるような心がけが有効なのだと思います。
今回の参考図書
書いてあることは至極シンプルなことですが、気になった節を自分の経験と照らし合わせながら2、3回読むと、非常に役立つ気づきを得られたりします。