ナリワイという考えかた。書籍「ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方 伊藤洋志」
以前、知人がオススメしてくれた、「ナリワイをつくる」を読んでみました。
何かと人生の不安や焦燥を感じることの多い時代です。
仕事もきちんとしていて、金銭や保証が、どんなにあっても「なんかいかん」という思いから抜けきれない人もいらっしゃるでしょう。
ナリワイの考えかたには、自分の生活に対して充足感を得るための、実際的なノウハウが豊かに提案されています。
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ナリワイを持つ生き方
書籍の「はじめに」に書かれた一文。ナリワイの著者の考えは、ほとんどこれに収束します。
個人レベルではじめられて、自分の時間と健康をマネーと交換するのではなく、やればやるほど頭と体が鍛えられ、技が身につく仕事を「ナリワイ」(生業)と呼ぶ。
これからの時代は、一人がナリワイを3個以上持っていると面白い。ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方 はじめに より
著者は、
「仕事といえば、就職すること」だったり、
「仕事は1つの会社だけでやる」だったり、
「生活を犠牲にするのが仕事」だったり、
そういった感覚が、半ばみんなの常識と化している状況に、小さな異議を唱えています。
ナリワイの考え方は、高度経済成長前、大正時代くらいの日本の百姓にヒントを得ているようで、
- 家でも車でも徹底して無駄な支出を減らす
- ないものは何でも「自給」する
- 自分が見つけた小さな「種(アイデア)」を生業に育てる
- ローリスク・ローリターンで生業作りへ何個もトライする
- 複数の小さな生業を組み合わせて生きていく
- 生業をしながら生活を自給する力を同時に蓄えていく
など、一旦、外部の力を引き算して、個人が自ら豊かになることへ視点を向ける考え方をしています。
しかも素晴らしいことに、ナリワイをつくるには、金銭だったり、才能だったり、経歴だったり、「特別な何か」を必要としません。
家が欲しい!さてどうする?
最近は、誰しもとは言いませんが、あなたが「家が欲しい!」となったとします。
土地を買って、住宅を建てて・・・
そんなこんなで見積もり4500万円!
高い!
え?35年ローンで月々8万円?
うーん、なら考えようかな。
どうしようかな。うーん。
一般的にはこんな感じになりますかね。
ナリワイ的に考えてみる
さて、ナリワイ的な考え方だと、どうなるでしょうか。
こんな感じになります。
よし、あそこのボロッボロの空家を買い取って、シェアハウスにして運営してみよう!
はい?って感じでしょう。
でもこういう風に考えるんです。
例えば、空家を買い取るなら、解体費用を払いたくないオーナーが「安くていいよ」というかもしれません。
建物のリフォームをしたことがなければ時間はかかりますが、自分でやれば技術が身につき、その後に生かせます。
シェアハウスにすれば、必然的に住民を募るので、一緒に家を建てなおす仲間ができるかもしれません。
運営がうまくけば、空家を立て直してシェアハウスを運営するビジネス、つまり「ナリワイ」が一つ育ったことになります。
前者が、「4500万をどうするか」で、自分の人生を完結させたところ、後者は、「建築を安くやる方法を知って、建て替えの技術・知識を身につけ、シェアハウスの運営ノウハウを得て、仲間をつくる」人生を送ります。
さて、あなたはどっちが良いですか?
自分なりの創意工夫と、発想の転換、何度も試行錯誤して、時間をかけて解決する。そのことにより、「ナリワイが育つ」と著者は言っているようです。
著者のナリワイの実践が一番、読んでいて面白い
実際、書籍には「こんな時どうする?」といったお題がいくつも出てきます。
普通なら、お金をかけてどうにかするか、費用がないからどうしようもない、くらいで、終わってしまうところを、著者がお金をかけずに、アイデアを加えて、自分の技能や、仲間を豊かにしながら実現していく様子が描かれています。
これが一番、読んでいて面白かったです。
会社員時代が楽しかった私。
正直いうと「4500万をどうするか」の人生も別に悪くはないと思っている口です。
しかしながら、それでも読んでいて「いやぁなるほど、そう考えるか!面白いなぁ!」と、ナリワイ的な考え方に、何度も膝を打ってしまいます。
「スローライフに憧れる」と言いながらも、1000円くらいのランチを毎日食べて仕事の疲れを癒し、今度、家賃15万のオシャレな部屋に引っ越すために貯金し、キャリアアップのためにスクールで英語習おうとし…なんて次々と考えてしまう人も多いはずです。(会社員時代の私がそうでした)
ナリワイの著者ならば、多分、同じことを10分の1以下の費用で実行しながら、ついでに、自分のスモールビジネスと、それに関わる英語を話せる仲間(友達)と、部屋を建築する技術を身につけてしまうでしょう。
ナリワイ的なやり方をいくつか読むだけでも、イノベーティブな視点を得ることができます。
日本の変換点で、個人が考えるべきこと
「ナリワイ」の考え方には、企業体を強く強く育て上げ、経済成長し豊かになってきた日本の変換点で、私たち個人がどう変わっていくか考えるヒントがふんだんに、しかもシンプルに散りばめられています。
稼いでも稼いでも不安なら、安心できるくらい支出減らしてみよう。
仕事に何にもやりがいを感じないなら、自分で現場の課題を見つけて、のんびりビジネスに育ててみよう。
家が高いなら自分で建てよう。
東京が生きにくいなら地方や海外で生活してみよう。
これ、全部できることなんですよね。
別に部長の許可も、スーパーマンみたいな能力も、国立大卒の学歴も、ビジネススクールの修了証も、TOEICの点数も、コネも、何も持ってなくてもいいです。
「今の場所」をスタートに、着実な取り組みを始められ、続けられる。
そういったところで、ナリワイ的な考え方が、非常に有意義なものだと感じました。
そんなわけで、「ナリワイ」。今の生き方にプラスして、自分に備えておきたい生き方です。