善良な人ほど振り回される?他人に惑わされない性格になるための5つのアクション
「いつも、他人に振り回されている気がする」
そういうかたは多いでしょう。
一見すると、他人に献身的な素晴らしい善意の人。
しかし実際は、
- 自己犠牲感
- 不毛感
- 自分の人生がコントロールできない
- ネガティブさ
などを常に感じており、そこから抜け出したいと思っている。
真面目に善意で生きているのになぜ苦労するのか。
なぜいつも、他人に振り回されてしまうのか。
今回は、書籍『共依存症いつも他人に振りまわされる人たち』をもとに、いつも他人に振り回されている感覚から抜け出す方法を考えてみたいと思います。
目次
最初に断りを入れると、今回は、共依存症については書きません。
“共依存症”の状態までいくと、カウンセリングなども必要になる領域ですので、専門家ではない私は「共依存」の解釈を広げて、誰もが感じることのある「いつも他人に振り回されている感覚」について効果的な対処を考えてみます。
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いつも、いつも、他人に振り回されている
多くの人に献身的な善意の人。
そういう人は、とても尊く、世に必要とされる存在です。
しかし、本人からすると、「自分がものごとの犠牲になっている」と、常に感じており、苦しい悩みを抱えていたりもします。
- 思ったことを言えず、嫌なこと、間違っていると思うことも引き受けてしまう。
- 大切な相手でもないのに断れず、力を尽くし、消耗してしまう。
- 自分が得しないのに、相手のために努力して、いいように使われてしまう。
こんなことありませんか?
いつも忙しいような態度を見せて、面倒な仕事を押し付けてくる同僚。
そして、それを断れない自分。
同僚「はぁ、もうだめだ。体調が悪くて何もできない。今日は定時に上がって病院かな。でも事務仕事がこんなにある…参っちゃったな」
こちらをチラチラと見ながらタメ息をつく同僚。あなたは、本当は事務仕事なんか引き受けたくないのに、こう言ってしまう。
あなた「大丈夫?体調が悪いなら無理しないで。それくらいの事務仕事なら私がやっておくよ。」
同僚「ありがとう!このお礼はいつか必ずするから」
あなた「お礼なんていらないよ」
同僚は、早く上がって病院で問題なしの診察を受け、飲みに行った。
自分は同僚の仕事で残業した。
(もちろん同僚からお礼はなかった。)
自分に余裕がある、自分が得する。
こういう状況ならまだしも、あなたはいつも余裕もないのに仕事を引き受けてしまう。
「あぁ嫌だ、次は断ろう」
そう思ってモヤモヤしたり、悩んだりするものの、一向に状況は改善しません。
なぜこのようなことになるのでしょうか。
あなたは”善意”ではなく”駆け引き”をしている
できる限り、他人に献身的に尽くしているのに、いつも他人からは大切にされず、いいように振り回されてしまう。
この問題を解決するにおいて、あなたの認識を修正すべき点が、2つあります。
- あなたは「善意」だけでは動いていない
- 他人は善意だけではコントロールできない
どういうことか、解説していきます。
あなたは「善意」だけでは動いていない
善意だけでは動いていない?
どうゆうこと?
これは、「ストレスから逃れるため、善意の行動をとる心理」、これを知ることで理解できます。
他人に献身的で善良な(他人から好かれる)自分。
それを振り返ると、自分を尊敬する気持ちになり、とても気分がよくなります。
他人に尽くさず利己的に振る舞う(他人から嫌われる)自分。
それを振り返ると、自分を恥ずかしく、罪深く思い、強いストレスを感じます。
自分への罪悪感を認めると人は強いストレス(不快感)を感じます。
先ほどの仕事の例。他人に振り回されやすい人にとって、「頼みごとを断る」のは利己的な行動でストレスを強く感じます。相手が嫌な気持ちになり、自分を嫌うかもしれないのですから。
実は罪悪感によるストレスから逃れたいがために善行をする場合も多いのです。
他人は善意だけではコントロールできない
他人を善意でコントロール?
そんなこと、やろうとも思ってないよ。
見出しを見ると多くの人がそう思いますが、人は先を予測したうえで自分の善意の見返りとして、相手をコントロールしようと、無意識に行動することがあります。
先ほどの同僚の例。
- 嫌なことを見返りを求めず引き受ける
- →同僚が自分に感謝する(気分が良い)
- →同僚が仕事を押し付けてこなくなる
なんとなく、こういう算段を想像しているから、見返りもなく引き受けることができるのです。
自分が引き受けることで、自分にメリットあることを同僚がしてくれるのではないか、と思っているわけです。
この考えに立つと、あなたは心の奥底では相手の「見返りの善意」を期待し、相手が自分に都合良く振る舞うよう、コントロールするために、善いことを行っているとも言えるのです。
善意に隠れた、自分の心に気づく
このように人は自分では純粋な善意だと思っていても、罪悪感から逃れたり、相手をコントロールしたりするための駆け引きとして、善行をしていることがあります。
善意の人側にも、利己的な心理が混ざっているのは、十分にあり得ることです。
そして、利己心を持つことも、それを隠そうとすることも、特別、悪いことではありません。
- 手伝わなくてもいいのに、罪悪感から逃れるために手伝う
- 相手が善意をくんで、自分の思う通りに動くと期待し、見返りは求めない
事例に出てきた”あなた”は純粋な善人ではなく、同僚との駆け引きとして本心を無視して「善意の人」であろうと立ち回ったのです。(悪いことではありません。)
そして自分が期待していたように相手が動かなかったため、イラ立ちや不安を覚えていると言えます。
本心を隠して、なんとか相手を操作しよう、喜ばせようとする。自分の罪悪感を軽くしようとして言葉を慎重に選ぶ。
つまり、あなたは善意で最善を尽くし報われない人ではなく、単に駆け引きを失敗した人ということになります。
必要なのは価値転換
さて具体的にどうしたら、他人に振り回されてしまう心理から抜け出すことができるでしょうか。
利己心を徹底的になくす?
違います。みずからをこれ以上、厳しく追い込む必要はありません。
必要なのは価値転換です。
- 善意も利己心も含め”自分は大切“な存在である
- 自分が十分に健康なときにだけ、他人を助けられる
- 他人の問題は、自分は解決しなくていい
このような心持ちになれるよう、自分の行動を変えていくことがポイントです。
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他人に振り回されることから抜け出す5つのこと
共依存症のマインドセットを変えていくために必要なことの記載のなかから、効果的だと感じたものを5つほどピックアップしてみます。
01セルフケアのきっかけを作る(自分のことを鏡で見る)
今のあなたは自分の身なりや格好を楽しめていますか?
睡眠不足や、過食、深酒などで、顔や体に影響が出ていませんか?
毎日、表情は明るいですか?不要なほど暗い表情をしていませんか?
他人に振り回されやすいとき、人は自分をかえりみていないことが多いです。自分が見えていないので、自分を優先すべきかどうか、そもそも判断材料を持っていないことすらあります。
先ほどの同僚の例で、仕事を手伝った自分が、実は数日前から風邪をひいていたなんてことも、他人に振り回されやすい人だとよくあるのです。
鏡を見る以外にも、家族や友人に自分の状態を聞くでもかまいません。
客観的に自分がどのような状態か、他人のことを支える余裕がある状態なのか把握するクセをつけましょう。
02怒りは解決策ではなく、解決するためのエネルギー
他人に振り回されてしまう心理を持つ人のほとんどが、怒りを持ったときに2つの極端な対応をします。
- 全く怒っていないかのように振る舞う
- 怒りに身を任せて激昂する
一見、反対に見える対応ですが、どちらも、意図は一緒です。
- 善意を差し出せば思い通りに動いてくれる
- 身も蓋もなく怒れば思い通りの対応をしてくれる
相手にこうなって欲しいと期待し、かつ、その実現を相手にゆだねて、自分の行動責任から逃れています。
しかし、実際は、自分が望むように他人に動いてもらうのは簡単なことではありません。どんなことであっても、相応の指示能力やエネルギーが必要なのです。
怒りに支配されていることが認識できれば、自分を制御できる。(中略)自制心を失うのは良くない。怒りは単なるエネルギーであって、呪術ではない。
引用:共依存症いつも他人に振りまわされる人たち P.256より
怒ることは悪いことではありません。
怒りは自分を守るための、瞬間的な強いエネルギーです。怒りを覚えたときは、自分主体で問題を解決するために、怒りを冷静に使うべきです。
03境界線をきちんと定義する
自分のことを振り回していると思われる相手のリクエストに対して、どこまでが許容できて、どこまでが許せないか。きちんと境界を見定めましょう。
このとき、境界線は、「あくまで自分のため」に引きます。
- 物理的にこなせるではなく、あなたがこなせる
- 最善な対応ができるではなく、あなたが無理なくできる
- 相手が嫌な気持ちにならないではなく、あなたが嫌な気持ちにならない
他人にいいように振り回されていると強く感じるとき、あなたは境界の持ちかたを相手に有利にし過ぎている可能性があります。自分の器の限界を考えず、負荷をかけ過ぎているのです。
先ほどの例でいえば、
と、境界線を定義すれば、同僚の仕事を引き受ける必要はないと判断できます。
境界があれば、同僚が手をかえ品をかえ、色々な理由をつけて自分を頼ってこようとも、手伝わない自分を影で悪く言おうとも、自分が間違っていないことの冷静さを保てるのです。
04ほめてくれる人を見つける
共依存者はまた、賛辞(ポジティブ・ストローク)を受けるのが苦手である。しかし、何も自分が性格的にすぐれた人間だという事実に抵抗を感じる必要はない。
共依存者と言わずとも、ほめられると人は、「自分は賛辞を受けるほどの人間ではない」と謙遜からつい否定しがちです。
しかし、ほめられること(そしてそれを嬉しく思うこと)は心理的に非常に重要です
ほめてもらったときに素直に喜ぶことで、脳内にエンドルフィンというホルモンが分泌されます。
幸福ホルモンと言われ、苦痛をやわらげ、刺激を少なくし、全身の健康を促進する働きのあるものです。他者に貢献した素晴らしさをほめられたのなら、素直に喜び(エンドルフィンを分泌させ)、自分の努力や苦労を報いてあげる方が健康的なのです。
- 褒められるのを避けていても結局..
- エンドルフィンは、アルコールの摂取や食事、ランナーズハイや飢餓のような状態の時にも分泌されます。
ほめられるのを避ける人が、つい飲酒習慣を持ってしまったり、食べ過ぎ(もしくは拒食)をしてしまうのは、結局、自分の善行に対して、遠回りな代償行為を求めているとも言えます。
人によっては、誰かを褒めて自分の期待通りに動くよう試みたことがあるでしょう。その逆も然り。これは善意による相手のコントロールと同じ行為。
ほめられても警戒して素直に喜べないのは、過去の自分の行為が影響している場合もあります。
しかし、それでも大丈夫です。
下心なく人をほめ、ほめられて素直に喜ぶことを意図的に繰り返せば、ほめられて素直に喜べない心理は解消されるようです。自分をほめてくれる人を周りに見つけ、トレーニングだと思って、ほめ合える関係を作っていきましょう。
05自分の期待には自分が責任を持つ
他人に振り回される心理をもつ人は、相手へ期待をもったときに、行動責任を、自分ではなく相手に委ねてしまう傾向があります。
何かをしてほしいとき、「〇〇してほしい」と相手に頼まず、遠回しに愛想を良くする。
何かを嫌だと感じたとき、「私は〇〇が嫌」と言わず、自分と関係のない理由で相手の行動をコントトールしようとする。
こういった行動をしても、他人が自分の期待通りに動くことは、ほとんどなく、いつも期待を裏切られたような感覚を抱く原因になります。
期待や理想は、誰もが抱くものですし、それを他人に向けることもほとんどの人が考えることです。しかし、他人を自分の期待通りに誘導しようと躍起になるのは控えましょう。
大切なことは、自分の期待に自分で責任をとることだと思う。なにも抑えつけることはない。むしろ明るみに出して、正当なものかどうか検討してみよう。だれかに話してみるのもいい。
よほど失礼な内容でない限りは期待を悪いことと思わず、ありのままに打診してみましょう。
相手がそれを受け入れるか、受け入れないかは、あなたの問題ではなく相手の問題です。
オープンに期待を打診し、そして、相手が自分の期待に「NO」を示したとしても素直に受け入れる。それが自分の期待に自分で責任をもつことです。
初めから相手のNOを恐れて、「相手が期待通りに動かなかったら嫌だな」と、アレコレ作戦を練るのをやめるだけでも他人に振り回されやすい心理をかなり解消することができます。
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最初のたとえに戻って..
最初の例、同僚が仕事を押し付けようとしてくるとき、他人に振り回されないあなただったらどう対応するでしょうか?
まず、あなたが体調が悪い(ストレスがある、嫌な思いをしている..etc)なら、それに気づきましょう。
自分に同僚の仕事を手伝う余裕がなさそうなら、余裕はないと判断しましょう。
そして、あなたが常々、同僚の行為にイライラしているならば、その怒りをうまく使いましょう。人は怒っているときほど、相手の事情に深入りしすぎず、自分の意見を言いやすいのです。
「自分が仕事をやりたくないと思っている」ことは正しくないことではありません。
「嫌な雰囲気になっても私は断るべきだ。断ることは自分にとって正しい」、気持ちを固めましょう。
同僚「はぁ、もうだめだ。体調が悪くて何もできない。今日は定時に上がって病院かな。でも事務仕事がこんなにある…参っちゃったな」
こちらをチラチラと見ながらタメ息をつく同僚。
あなた「大変ね。でも悪いけど私は手伝わないよ。あなたの仕事までやりたくない」
同僚「あぁー!違う違う!ごめんね心配かけて。大丈夫。”自分が無理すればいいだけだから”。あぁ、今日までの仕事がいくつもあるなぁ..」
(↑最初に境界線を提示すると、相手は、確認のため、カマをかけて罪の意識を再度刺激してきたりする。)
あなた「(相手のカマかけに触れず)悪いわね。私も体調悪くてやりたくないのよ。どこか別を当たって」
同僚「あ、そう」
(急に立ち上がり、別の同僚のところへ仕事をお願いしにいく)
他人に振り回されやすい心理を持つ人は、このときの、相手の対応の後味の悪さや、同僚の仕事を押し付ける癖が治っていないことを気に病んでストレスを感じますが、それで大丈夫です。
冷静に考えてみてください。
- 相手の対応の後味が悪いのは、自分のせい?
↑ただの相手の駆け引き戦略です - 同僚が仕事を押し付けようとする癖は、誰の問題?
↑当然、自分ではなく同僚の問題です
ストレスは、しばらく休養すれば回復します。
自分の仕事を終えたら、自宅へ帰りゆっくりと休養する時間をもうけましょう。
お互いを素直にほめ合える関係の友人に電話でもかけて、会話を楽しみましょう。嫌な思いにも向き合い、自分のために冷静に頑張った自分を讃えましょう。
仕事を断った同僚が自分の陰口を社内に広めているかもしれない、別の機会に嫌なことをされるかもしれない。そういったことを気に病む必要はありません。問題は起きない確率が高いし、起きても解決できるからです。
もし嫌なことが実際に起きたら、相手の善意や改心に期待して我慢するのではなく、嫌な思いをオープンに、ありのままに伝える努力をしましょう。
もちろん、問題はすぐに好転しないかもしれません。(同僚が執拗に自分を攻めてくるかもしれない。)それでも問題をオープンにすることで、周囲の解決力を取り入れることができます。相応のスピードをもって、状況は改善されていくはずです。
他人に振り回される人は、他人を振り回す人でもある
文中のたとえに出てきた「同僚」。
意外かもしれませんが、実はこの人も「他人に振り回されやすい人」のパーソナリティです。
実際、他人に振り回されやすい人は、自分で解決仕切れない問題を抱え込んでしまい、自分が限界を迎え始めると、善意の人から一点し、相手のことを考えずに利己的な行動を取り始めたりもします。
同僚は、実は逆らえない上司からいつも無理難題を押し付けられ続けていた。
物理的にこなせる仕事量が限界に達して、ヤケになっており、とにかく少しでも仕事を押し付けられる先を探していた。
たとえば、こんな事情があったりもします。
そして同僚に仕事を押し付けられ続け、それに逆らわない自分自身も、いつか限界に達して、会社を無断欠勤して迷惑をかけたり、家で家族に怒鳴り散らしたり、他人を振り回すような存在になっていくのです。
結果的に、他人のためにも動いていないし、自分のためにも動いていない。
そういう意味で、他人に振り回される人と、他人を振り回す人は、実は同じような存在なのです。
書籍で、共依存から抜け出すための考えかたの中に、大事な一文があります。
私はあなたを愛しています。でも自分のことも愛しています。
自分は他人と同じくらい愛して良い存在であると認めることは、非常に大切なことです。
完璧でなくとも、自らの今の姿に「自信」や「責任」をもちましょう。そして、少しずつでも、自分を他人と同じように愛せる心持ちになるよう工夫していきましょう。
現代は、社会が細やかになってきた一方で、健常なときでも心理的な負荷が高く、悩まされることが多い時代です。心が健康なかたであっても、知識を得て、うまく対処できる方法を探っていきたいところです。