感情はエネルギーがたくさん必要。「感情疲労」を知り適切な休養をとろう
最近、なんだか疲れて、イライラして、物事がうまくいかない。仕事もそこまで忙しいわけではないし、休日はしっかり遊んでリフレッシュしているんだけどなぁ。
しっかり休めている気がするのに疲れている。
そんなとき人は感情労働による「感情疲労」やによって、知らず知らずに心に疲れを溜め込んでいる可能性があります。
今回は、自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術より、感情のエネルギー消費についてご紹介します。
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感情はエネルギーがたくさん必要
人は感情を発動しているとき、エネルギーを大量に消費しています。
感情は、原始人が生死に関わる対応をするためのもの。つまり、命がけ、いちかばちかの反応なのだ。
引用:自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 P.129 より一部抜粋
もともと感情は原始時代、人々が野生で生きのびるために機能させていたものです。もともと命がけの場面で発動するため、どの感情でも極端にエネルギーを消費するものなのだそう。
例えば…
- 喜ぶ・・・水や食料を見つけ、仲間に伝える。笑う・大声を出す
- 怒る・・・敵から身を守る。他者から自分の居場所を確保する。攻撃する
- 不安・・・万が一のリスクを想定する。死や最悪の状況への対処
人間は感情をだしているとき、爆発的にエネルギーを消費して脳や身体を動かし、目の前の状況に対処しているのです。
感情のエネルギーは”無駄に”たくさん使われる
現代は原始時代のように死と隣合わせではありません。
命がけになることなんて、滅多にありませんね。
目の前の状況へ対処するのにも、命がけ、いちかばちかといったような大量のエネルギーは必要としません。
それでも原始時代から、人の脳のつくりは大きく変わっていません。
よってどんな平和なときであろうと、感情が発動されているとき、私たちは原始時代と同じ、命がけ相当のエネルギーを消費します。
つまり、私たちは現代社会で生きていく分には不必要な量のエネルギー、つまり無駄にたくさんのエネルギーを使って感情を発しているです。
感情疲労がたくさん溜まる場面
感情の発動と目の前の状況が一致していた原始時代と違い、現代は感情とは無関係に物ごとが進むシーンが多いです。感情疲労が溜まりやすい場面も多いといえます。
感情の「我慢と継続」が起こる場面
現代では、感情の我慢と継続が起こる場面が多く、感情疲労も溜まりやすいのだそう。
同じ行動でも、
- 感情を表に出しながら行動する
- 感情を抑えながら行動する
後者の方が通常の労働に感情労働が上乗せされ疲労が大きいのです。
現代は「怒り」が例としてわかりやすいです。
あなたが会社で10分くらいで作れるちょっとした資料を作るとします。普通なら資料のこと以外は何も考えずに作成して終わりです。
しかし資料をお願いしてきた同僚が嫌味っぽい依頼の仕方をしてきました。
「この忙しいのに余裕だねー。暇ならこれくらいやっといてよ」
あなたは「もう少しマトモなお願いの仕方ができないのか?」と怒りを抱きました。
怒りが発動したとき、原始時代ならその場で攻撃・威嚇して自分に危害を加える要素を遠ざけます。
しかし今の時代、そんなことしたら大トラブルですね。あなたは当然、怒りを我慢します。
さらに原始時代なら嫌な相手も離れてしまえば、もう会うかどうかもわからないですが、現代は次の日以降も同じ会社でずっと顔を合わせます。
あなたは嫌な同僚を見るたびに胃がムカつきますが、穏便に解決するまではそれを我慢し続けなくてはいけません。
自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術を参考にみなみのひげが作成
この例では、通常の作業労働に加えて、
- 怒るエネルギー
- 怒りを抑えるエネルギー
2つの感情労働が加わっています。
こういう状況だと10分の簡単な作業でも非常に疲れます。
「私以外でもやる奴がいるだろう」
「こんな気分で作業なんかやりたくない」
そういった色々な気持ちが頭を巡り、下手をすると作業に頭が回らないことすら起こります。加えて会社に同僚がいる限り怒りを継続的に我慢する必要も出てきます。
インターネット(SNSなど)を使う場面
また、インターネットの普及(SNSの拡大)も、感情疲労には大きな影響があるといえます。
- 24時間連絡でき、常に感情の波が起こりうる状態
- 強い感情刺激がある動画や画像が常にある
- 誤解も多く、顔の見えない相手から攻撃的なメッセージが届くことも
- 匿名掲示板は配慮ない言葉で他人を攻撃するのが普通
今まさにあなたが見ているインターネットは、感情エネルギーを消費させっぱなしにする情報がたくさん潜んでいる環境です。
利用している側の想定以上に、心理的な疲労を蓄積させるそう。
私も仕事柄、なんとなくで、ずっとウェブ情報を見ている人間ですが、確かにいろいろなウェブサイトを1日中見ているとぐったりと疲れたようになるのは事実です。
実際に大量の感情的な疲労が溜め込まれているからなのでしょう。
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楽しいことでも感情疲労する。「新型うつ」も?
最近、ただのうつ病ではなく、「新型うつ」と呼ばれる症状も話題にあがります。
よくニュースで例になるのがこういったこと。
普通に考えるとただのズル休みです。しかし新型うつの場合、実際、会社に来ている間は本当にうつで苦しんでいるのです。
本人が「甘えじゃない」といっても周りもどうしていいかわからず..。
どの人も浮かばれません。
新型うつの特徴
- 他責的(他者を責める傾向)
- 他人の言動に傷つきやすくなる
- 夕暮れ時に出現(従来型は朝に出現傾向)
- 過眠や過食が特徴
- 自分に好ましい状況下で抑うつ感が消失
参考:現代人に影を落とす「新型うつ病」とは|医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣 内容より症状をリストアップ
この新型うつは書籍によれば、まさに感情疲労による蓄積疲労を知らずに偏った休みかたをすることで起こると考えられるそうです。
休もうとして疲労を溜めてしまう人
新型うつの人は、なぜうつであるにも関わらず旅行へ出かけるのでしょうか?
→ リフレッシュすると心の疲労がとれる
→ うつが治る
このように信じているからだといえます。
そうです、この新型うつの本人は、うつを直すために旅行へいって気分転換を図っているのです。
しかし感情疲労のことを考えれば、これは反対の行為。
楽しい・嬉しいことでも疲労が溜め込まれていくため、平日に仕事で心身ともに疲れ、休日に「楽しいことを」と思いながら、さらに疲労をためています。
これを繰り返せば心がどうしようもなく疲れて「うつ」になってしまうのも無理はありません。
何もせずゆっくりと静かに過ごそう
休日にたっぷり遊んで気持ちをリフレッシュさせることは、とても素敵なことですが、心理的な疲労がたまっているときには良い休息方法とは言えません。
「外に出ないと休日が充実していないと思われる」なんて悩む人もいるようですが、それで心の健康を損なっては元も子もありません。
疲れているな、と感じたら休日はゆっくり静養する時間を確保しましょう。
堂々と何もしない休日を取り入れる方が、心身ともに回復することができ、充実した毎日を送ることができるようになります。
目に見えない疲労に気をつけて
物理的な疲労は目に見えます。
筋肉痛だったり、体調不良だったり、風邪をひいたり。
そういった不調が見えると、人は静かに「休息」をとって回復しようとします。
一方で、感情の疲労となると、そうはいきません。
感情の疲労は目に見えません。どの程度、自分が消耗しているのかよくわかりません。そもそも感情で疲労することすら、あまり実感がわきません。
自覚がないまま、疲労をどんどん溜めて調子だけが悪くなっていく状況が起こり得ます。
身体は休むと元気になるのに、なぜかすぐにうつのような状態が出てきてしまう。
この状態に陥ると、気分の落ち込みと回復をずるずる繰り返し、本人も周囲の人も長期的に疲弊してしまいます。
正しい場面で感情を放出することは、現代でももちろん大切なことです。
一方で、ムダな「感情疲労」が世の中にたくさんあることを把握して、見えない疲労蓄積に苦しむことは避けたいところですね。
今回の参考図書
疲弊しないでパフォーマンスを上げていくことを学ぶのに、非常に役立った一冊です。全体を通して実践できる内容が多いので、ぜひ、読んでみてください。